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『捨てられる銀行』

雨読夜話

捨てられる銀行 (講談社現代新書)
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橋本 卓典
講談社 2016-05-18

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ここ20年くらいにおける金融庁の政策と、それに伴う地方銀行で発生してきた問題、そして森信親氏が金融庁長官に就任してからの改革の意義などについて解説している作品。

90年代から2000年代前半は不良債権の問題が深刻だったため、金融庁は厳正な検査マニュアルを作成・運用して銀行の放漫経営を取り締まったり、貸し渋りを防ぐために担保・保証制度を整えたりし、結果として不良債権は減った。

その反面、特に地銀は担保や保証に頼れば融資ができる、検査マニュアルに通ればいいという感じで、低金利での融資競争や傾きかけた貸出先からの貸し剥がしに奔走するようになり、地域の中小企業が必要とする経営支援などの役割を果たさなくなったことが深刻な問題になったことが書かれている。

地銀は顧客である中小企業がどのような問題を抱えているのかをヒアリングするする必要も能力も失っている状況は深刻で、いくら日銀が金融緩和をしても実体経済への効果が限定的だったのも理解できる。

こうした顧客や地域経済に向き合わない傾向に対して森長官が強い危機感を抱き、省庁がやるには異例の果敢な改革を実施していることが書かれている。
主導しているのが金融庁のトップなだけに官僚たちや地方銀行がサボタージュする傾向も熟知しているわけで、地方銀行で企業の経営支援などで実績を上げてきた人材などをスカウトしたり、形式的な対策にならないような手法を取っていることが書かれている。

そして改革に携わるキーマンたちの話や地方経済に貢献している地銀の例なども挙げ、顧客である地域の企業のために貢献できない企業は淘汰されていくであろうことが書かれている。

例えば以前読んだ『投資は「きれいごと」で成功する――「あたたかい金融」で日本一をとった鎌倉投信の非常識な投資のルール』のように長期的な視点で中小企業を支援する投資ファンドが出てきたのも、地銀が本来の仕事をしていなかったことが背景にあるのだろうと感じた。

地方銀行が主体となって地域の中小企業を支援するファンドを運営することもひとつの方法として考えられるが、これもまた業界の慣習などが抵抗となってすぐには実現が難しいのだろう。

地域経済を蝕んできた問題の根深さや森長官の改革の行方など読みごたえがあり、色々と考えさせられる内容だった。






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